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未来へつなぐ、足立のものづくり

古くからものづくりを営んできた街、足立。代々受け継がれてきた職人技は単なる技術ではなく、日々の暮らしに寄り添い街の歴史を紡いできました。足立に根付くものづくりの温かさと、そこに込められた物語を紐解いていきます。

職人技と地域の宝もの

足立区 東京 |2025年09月02日

職人技と地域の宝もの

下町で育んだ和の味 日本の心と技を世界へ
【和菓子】

 

喜田家 六人衆|中西 浩樹さん
製菓専門学校を卒業後、喜田家で和菓子作りに従事し21年目。高校時代の英国留学で日本文化の素晴らしさに目覚め、和菓子職人の道へ。将来は海外で和菓子文化を広めることを目標とし、現在は生産本部部長として活躍中。
  • 20年以上和菓子作りに携わる中西さんが最も大切にしているのは、作り手の心が味に出るのでちゃんとした気持ちで作ること。雑な仕事は雑な味につながり、心を込めれば美味しい和菓子が生まれる。お客さまからの「美味しい」の一言のために、日々丁寧に和菓子作りに向き合っています。特に難しいのは温度や湿度で材料の状態が変わるため、一年を通して均一な品質を保つこと。それでも「和菓子は四季が大切」と、旬の素材を活かしたお菓子作りを心掛けています。また、高校時代からの夢だった「海外で和菓子文化を広める」ことへの第一歩として、ロンドンの「HYPER JAPAN」コンテストに出場した際には「和菓子作りをしていて良かった」と感じたそう。地域のお祭りやワークショップを大切にし地域住民との交流を深めている喜田家。「和菓子といえば喜田家さん」と、下町の人々に愛される存在になることを目指しています。「今後は、ここ千住から広い範囲に喜田家の和菓子を届け、将来的には海外にも知ってもらえるブランドに成長させたいです。」
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    毎日使う道具は、自分の手に馴染むように削るなどして、一つひとつをオリジナルに仕上げています。道具は単なるツールではなく、最高の和菓子を作るための大切な相棒です。
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喜田家 六人衆

TEL.03-3881-3303/(本社・工場)足立区千住緑町1-24-20

喜田家 六人衆

思い出に新たな生命を吹き込み未来へつなぐ
【ランドセルリメイク】

伊藤鞄製作所|渡邉 誠さん
区内の工業高校を卒業後、鞄の販売業を経て2008年に入社。製造・生産部で経験を積み、修理・リメイク部へ異動して12年目。幼い頃から好きだったものづくりへの情熱を胸に、現在はお客様の大切なランドセルを蘇らせる仕事にやりがいを感じている。
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    ランドセルリメイクは、ランドセルの状態確認からお客さまとの打ち合わせ、裁断、縫製、そして検品まで、複数の工程を経て完成します。渡邉さんが最も大切にしているのは「手仕事」へのこだわり。お客さまにとって唯一無二のランドセルを扱うため、要望を正確に把握し製品に反映させることに最も慎重に取り組んでいます。細かな生地の質感を手で探り、ミシンの力加減を調整、一つひとつの製品の耐久性と完成度を高めるのも手仕事ならでは。傷や汚れも「思い出」として活かし、お客さまと対話しながら形にしていきます。「このキズ、あの時のだ!」と喜ぶ姿が、渡邉さんにとって大きなやりがいとなっています。
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    足立区で長く事業を営み、足立区のイメージを変えたいという強い思いを持つ渡邉さん。地域との連携やふるさと納税の返礼品を通じて足立区に貢献しショールームRegalo Feliceを設けることで、より多くの人に鞄の魅力を伝えています。

伊藤鞄製作所 Again/Regalo Felice

TEL.03-3620-0088/足立区東綾瀬3-5-7(受付)/9:30~17:30/日祝定休

伊藤鞄製作所 Again/Regalo Felice

次世代へつむぐ、使う人に寄り添うものづくり
【医療器具屋さんが作った耳かき】

三祐医科工業|澁谷奏衣さん
都内の高専を卒業後、新卒で三祐医科工業に入社。もともと医療分野のものづくりに興味があり、インターンシップで耳かきの製造を体験。その時の楽しさとやりがいから入社を決意したとのこと。現在は耳かきだけでなく、様々な医療機器の製造に携わっています。
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    医療機器づくりには、材料切断から組み立て、検査まで多岐にわたる工程が存在します。ものによっては製作に1ヶ月程度かかることも。先輩と同じように作っても同じものができない難しさを感じつつも、澁谷さんは「一つひとつ丁寧に」ということを何よりも大切に、使う人のことを考えて製作にあたっています。「ここをこうしてほしい」という細かな要望に応えるのも手仕事の価値。完全オーダーメイドにも対応し、ユーザーの満足を追求します。一度担当したお客さまから二度目の注文が入ったり、展示会で初めて製品を使った人から喜びの声をもらったりすることがこの仕事の醍醐味。また「耳かき文化のない海外の人にも使ってほしい」と新たな夢も抱いています。
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    医療機器の会社というと馴染みは薄い存在ですが、耳かきのおかげで地域の人に親しんでもらえるようになったと澁谷さん。「足立区に住み、足立区で働くからこそ、近隣住民との交流を大切にしています。」

三祐医科工業

TEL.03-3605-7842/足立区六木1-12-9

三祐医科工業